八百万の神

いつごろからなのだろうか、参道の真ん中は神様の通り道だから歩いてはいけないと言われるようになったのは。
僕が育った町にも小さな神社がある。
小さい神社なので参道といえるほどのものはない。とはいっても境内には鳥居もあるので神社の敷地の入り口から鳥居に至るまでの部分は参道といってもいいだろう。
小さい頃から参道の真ん中を歩いてはいけないと注意された記憶はない。僕の記憶がないだけかもしれないが。
しかし、そもそも参道というのは参拝するための道なのだから、そこを神様が通るというのもおかしな話だと思うのだ。
もっとも日本は多神教の国で、八百万の神様がいるとされてきていたのだから、参道を通る神様を祀った神社もあるのかもしれない。
でも全ての神様がそうだというのは変だと思う。
そもそも、神様はいたるところにいて、道祖神という道の神様や台所にはかまどの神様、便所には便所の神様がいる。かまどがある台所は数少なくなってきたのでかまどの神様は少なくなってしまったのかもしれないが、ここでいう神様というのは僕たちが生活しているこの世界のことであって、この世界と共存してこの世界を大切にしていくということでもあるのだと思っている。参道の中央が神様の通り道なのであればそこは区切りをつけて人を歩かせないようにするべきで、そうでないのであれば、神様と共に生きる世界であればいいのだろう。
僕の町の神社は、僕が子供の頃は子どもたちの遊び場だった。そしてそこで遊ぶことで、僕たちは神様というものを身近に感じつつ少しだけ理解していったのだろうと思う。

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