世紀末鬼談

怪談+<滝沢紅子>シリーズ+<もしもし倶楽部>シリーズを集めた雑多な作品集。
長編版の<滝沢紅子>シリーズを読んだので、ついでに短編のほうも再読しようと、いや、正直に言うとこの本、読んだことがあるのか記憶にない。ので初読といったほうがいいかもしれない。実際に読んでみてもどの話も記憶にないので多分初読なのだろう。
都筑道夫は大好きな作家なのだが、都筑道夫の怪談はあまり好きではなく、一時期怪談ばかり集めた本が出続けていたのでその時期の本は読んでいないのだ。
それはさておき、前半の怪談の部分は読んでみるとそんなに苦手意識が働かない。
怖いというよりも、現実と非現実との境が曖昧になってもやもやとした状態で終わる話が多いのだ。その一方で、幽霊が実際に登場する話においては怖さや曖昧さは抜け落ちて理論整然とした、つまり、幽霊が姿を表わすことも出来るのに何故、姿を表さずに声だけで現れるのかという謎解きになっているあたりはひねっている。
<滝沢紅子>シリーズのほうは三篇。
『全戸冷暖房バス死体付き』から数年後に書かれた作品で、作品内の時代もそれなりに経過しているようで、主役の一人だった猿(ましら)紘一は登場しない。タイトルは「○○○○の死体」と前作と共通なので一冊にまとまるくらい続ける予定はあったのかもしれないが、短編に関しては四作で終わってしまっている。
<もしもし倶楽部>シリーズも三作。電話をとおしてのお悩み相談、満足したら倶楽部に対しての維持費に相当するお金を振り込んでいただくというシステム。
電話をとおしての物語なので全編、会話だけで地の部分がない。全編会話だけのミステリというと笹沢左保の『どんでん返し』がある。『どんでん返し』のほうが一冊にまとまっているうえに書かれた年代も早い。三作で終わってしまったのは才人都筑道夫でもってしても大変だったのかもしれない。

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