あげくの果てのカノン 5

不倫SFという触れ込みがSFとしてはちょっと損している気もする。
SFとしてみた場合、満足できたのかというと少しばかり消化不良で、結局この異星生物は何だったのかという部分に関しては説明されないまま終わってしまう。さらに陰謀めいたことも提示されるのだがこれに関してもうやむやなまま終わってしまう。
でも、それでも、異星生物を医学的に利用することによって、大怪我をしてもよほどのことがない限り治療できるという設定と、治療する代償として心変わりが発生するという設定が恋あるいは愛という部分に密接に絡んでいる物語は立派にSFだといえよう。
どんな人体に損傷を与える大怪我でも、治療可能という状況は異星生物との過酷な戦闘によって半ば強制的に発生させられるあたりも物語の構成として面白い。
最終巻であるこの巻では治療するたびに心変わりをしてしまう先輩自身が、心変わりをすることによって失っている物があることをしっかりと理解していて、不倫をしながらも奥さんに対する心変わりが起こってしまっていることを悲しく思っていることがわかる。ようするに不倫していながらも奥さんとは相思相愛だったのだ。
一方、主人公は失恋したことを理解する。そしてこの本一冊の大半をついやして、先輩への恋を忘れ去ろうとする。それは成功したように見える。
のだが、新たな一歩をしっかりとした足取りで歩き始めている主人公のもとに先輩が現れる。
ここからがこの漫画の本領発揮だ。
やっぱりそうかい!という展開を見せながら二回ひねりをする。
ま、不倫SFだったのが恋愛物語として終わろうとしているのだからこれでもいいか、なにしろタイトルがカノンなんだから。

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