少し未来の話。
今は存在しない技術が実用化されたという設定のもとに描かれるSF短編集。
最初の話は、運というものが数値化され、さらにスマホのアプリによってその運を使うことが可能になった社会の話である。
たまに、身近な会話の中で、一生分の運を使い切ってしまったとか冗談半分に言うことがあるけれども、それか可能になったとしたらという話である。
一週間の始めに運が振り分けられ、その数値は人によって様々で、たくさんの運の数値をもらうことができる人もいれば少ない人もいる。
そしてスマホにインストールされたアプリによって、その運を使うことができる。使う際にも使う量を指定するので一週間の残りの日数と残りの運とを考えながら今回はこの分だけと数値を入力して運を使うのである。
指定した数によって効果はさまざまで特に相手がいるような場合、つまり、競争相手に勝つために運を使う場合、相手も運を使ってくる可能性もあるので相手が使ってくるかもしれない運の量を上回る数を指定しないと、運を使っても効果は得られない。
そんななか、生まれつき運の悪い男が登場する。彼の毎週の運の数値は最低水準である。しかし彼は明るく生きている。
運がないだけ、その分、うまくいったのであればそれは自分の実力なのだ。
そう彼は思いながら生きているのだ。
発達した技術の中で、どのようにその技術と向き合うか、あるいはその技術の中でどう生きていくのか、そしてどんなに技術が発達したとしても人は人である。そんな物語である。
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