一人の少女の視点で物語がはじまるのだが、少女が語る少女の日常の様子は異様である。
牢獄のような部屋に入れられ、毎日決まった時間に兵士がやってきて車椅子に手足を固定され、頭も椅子に固定され、教室へと連れて行かれる。そこで授業が行われるのだが、そこで行われる授業の内容もどこかおかしい。
やがて少しづつ少女を取り巻く世界が明らかになってくるのだが、そこで驚くのは少女が人間ではなくいわゆるゾンビで、世界は原因不明の病気によって滅亡の危機にひんし、大半の人間はゾンビと化して、生き延びたごく一部の人間が柵を作りその中で生活をしている。
そして大半の人間は生きる屍と化し、人肉を食べるという意志のみしか持ちえない状態になってしまったのだが、ごく一部、言葉を喋り、考えるということができるゾンビたちがいた。何故意識を持ち、しゃべることができるのかを調べるために、しゃべる事のできるゾンビ達を集めて研究する施設がこの少女たちのいる場所であり、少女達は研究のために捕まえられたゾンビなのだ。
この物語の一連の世界観がわかったあたりで物語は大きく変化し、この施設はゾンビ達に襲撃され、少女を含めた5人の逃避行が始まる。
派手な展開も見せるがその一方で登場人物たちの様々な思惑がじっくりと描かれて、登場人物たちの奥行きが広がっていく。嫌な人物はとことん嫌な人物になっていく一方でその人物にもそれまでの人生というものがあり、その人物なりの生き方というものが描かれていくので、だったら仕方がないなあと思ったりもする。
物語の終わりは唐突的でもあるが、ゾンビ化させる病気の謎、意識を持った少女達の存在の謎などが一気に明らかになり、そして明らかになったことにより、より絶望的な状態であるということも明らかになるのだが、個人ではなく種としての人類というもののほうを選んだ、いや、実際には個人の感情も捨てずに選んだのだが、少女が選んだ結末をおぞましいと感じるか希望と感じるか。
この突き放し方は嫌いではない。
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