隣町のカタストロフ 1

ある日突然、重力が逆転してしまう。
とはいっても作中では重力が逆転してしまったというようには言及されてはいないので実際はどうなのかわからない。
ただ、地面に固定されていないものは全て空に向かって落ちていってしまう現象が起こるのである。
そう考えると重力の向きが逆転してしまったと考えるしかないのだが、それが起こったのは日本のある特定の町だけで、それ以外の場所では何も起こっていない。逆転現象が起こっていない場所から、その場所を見ると、人や車、物が次々と空に向かって吸い寄せられてしまっているように見える。
この物語はその逆転現象が起こった町に住む人々の物語で、様々な人物に焦点をあてて、この現象が起こる少し前の時間から、起こった後の彼らの行動を描いている。
が、どの話もこの状態から生き延びようとするサバイバルの物語でありながら皮肉が効いていて面白い。
第一話は引きこもりの青年が主人公。学生時代は野球をやっていてピッチャーとして活躍をしていたのだがここぞという試合で負けてしまいチームメイトから非難を浴び、それが原因で引きこもりとなってしまう。しかし彼には幼馴染の女の子がいてなにかと彼のことを心配してくれている。そして天変地異が起こる。どちらも家の中にいたので助かったのだが、彼の隣に住んでいる幼馴染の彼女の家は地面から引きちぎられようとしている。そこで彼はロープを投げ渡し、彼女にそのロープを渡らせて自分の家にたどり着かせて彼女を助けることに成功するのだが、彼女には付き合っている彼氏がいて、怪我をした状態で彼女の家にいるというのだ。
自分に気があると思い込んでいた主人公はショックを受けるのだが、それでも彼女のためにロープを伝い、彼女の家に向かいそして怪我を負って身動きの取れない彼氏を助けようとする。しかし彼女の部屋で主人公が見たのはかつて試合で負けてしまった時に人一倍自分を非難したチームメイトの姿だった。彼女の彼氏は自分がこの世で一番助けたくない男だったのである。
となんとも皮肉に満ちた展開である。主人公がその後どういう行動をしたのか気になる人は読んでもらうとして、他の話も似たような感じで天変地異よりも面白い。

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