滅んでいく物語が好きだ。
死ぬということがどういうことなのか、多分生きている間は知る術がないから、いろいろな形の死を知りたいのだろう。
というわけで、この本も文明が滅んで、わずかに生き残った人々の物語だったので読んでみたのだが、正直にいえば最初は期待はずれだった。
二人の少女が廃墟と化した街をケッテンクラートという第二次世界大戦期にドイツで開発されたキャタピラー車に乗って旅していくという物語だが、ほのぼのとしているのである。
まあ文明が滅んで、生き残った人類も自分たちの他にいるかどうかもわからない状態で、くよくよとしていても仕方がないといえばそうなのだが、僕の期待する物語ではなかったのだ。
というわけで1巻だけ読んでそれっきりにするつもりだったのだが、4巻で意外な展開を見せるということを聞き、再び読み始めることにした。が、4巻を読んでもまあこんなものかという感じで、悪くはないけれども好みではないな、という感想しかなかった。で、5巻が出たので惰性で読み、まあこのままだらだらと二人の旅が続くのかもしれないけれども延々と続くわけではないので最後まで付き合ってみようかと思ったところで6巻目が最終巻となった。
主人公の二人の他には他の人はほとんど登場しない、ほとんど登場しないせいか、死も描かれることはない。
このままほのぼのとした状態でどのようなラストにたどり着くのだろうと思っていたら、6巻の開始早々、二人の旅を支えていた唯一の乗り物ケッテンクラートが壊れてしまう。乗り物としての寿命を迎えてしまったのだ。
修理するすべもない。
修理することをあきらめた主人公たちはケッテンクラートを改造してバスタブを作り、お湯を沸かして風呂に入る。
結果として乗り捨てることになるのだがその前にこういう形で最後の別れ方をする。
そしてその後は徒歩での旅となる。二人の目的地はあと僅かだ。
そびえ立つ建物の中を登り続け、頂上を目指していく。
ランタンの燃料も尽き、明かりは消える。真っ暗ななか、ひたすら階段を上り詰めていく。やがて僅かな光が見え、頂上にたどり着く。
しかし、食料も尽きた。
これまで描かれなかったものが1冊を通して描かれていく。
つまらないと言ったのは大間違いだった。
旅の終わりは物悲しく、そして終末である。
傑作だ。
そしてよい週末を。
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