メフィスト賞受賞作のわりにはまともな作品だ。
もっとも、ミステリであり中華ファンタジーであり時代小説であるというハイブリッドな内容なので、まともといっても普通のまともさではない。
秦の時代の中国が舞台ということで取っつきにくさは多少あるけれども、あくまで多少で、登場する人物達の個性が際立っているのもあって読みにくいということはない。
とにかくテンポよく謎が登場し、これでもかというくらいに不思議な出来事が起こるので読んでいて飽きないのはいいのだが、探偵役らしい人物は序盤から登場するも、終盤になるまでいっこうに謎解きに入る気配すらない。それというのも、真の探偵役は他にいて、その探偵役の人物は終盤にならなければ登場しない。
で、これでもかと言わんばかりに詰め込まれた個々の謎は探偵役によって解き明かされると、その真相はわりと小粒で、そのあたりがミステリとして読むと物足りない面もあるのだが、あくまでエンターテインメントの物語として読むと、終盤にしっかりと見せ場が用意されていて、さらには登場人物の以外な側面とか、物語の背景の部分にさらに大きな物語が見え隠れして、最後まで楽しく読むことができる。
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