文庫にして280ページほど。薄い。
長編ではなく短編で9編収録されている。
いつも通り、北海道を舞台とした物語で、咲子、小春、やや子という親子三代に渡る連作短編だ。
咲子も小春も若くして子供を産んでいて、最後のやや子の物語も20代の頃の話なので、描かれた年代の幅はそれほど長くはないとはいえども、9編、280ページほどの紙面でありながら底に描かれる時代の長さは決して短くはなく、三人のそれぞれの人生の長さと重みを感じさせる。
短編小説は人生の一瞬を切り取ったものだといった人がいる。桜木紫乃も3人の人生の一瞬を切り取ってそして9つの物語として描いた。
そしてその一瞬の切り取り方がうまいからなのだろう。短い話でありながら長い時間を感じさせてくれる。
桜木紫乃のうまさはそれだけではない。親子三代に渡る物語でありながら、親と子、子供と孫の接点がほとんどない。咲子は小春を自分の母親の元に預け、一人夜の商売として出稼ぎ生活を送っている。娘と会うことはほとんどない。小春も自分の子供、やや子を夫の元に残したまま失踪し、それ以降自分の子供と出会うことはない。そして母親の咲子とも会うことはほとんどない。いや、そもそも母親の咲子は小春のクレジットカードを借りて30万円の借り出しをして失踪してしまう。
最後のやや子の物語は途中までしか描かれないので、やや子自身が母親、祖母と同じ性格なのか同じような境遇に身を委ねるのかはわからないのだが、最終話ではそのような形にはならない結末を迎える。
咲子と小春の人生は悲惨だったのかといえば悲惨だったともいえるのだが、家族というつながりに希薄な感情しか持ち得なかった二人はそれ故に、必ずしも不幸せだったとはいいきれなく、また、誰かに選ばされた生き方ではなく、自らの意志でもって選んだ人生を送ったのだから、幸せとまではいえなくても、充分に生ききったといえるのではないだろうか。
星々たち

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