怒り

北欧ミステリはもう嫌になるほど翻訳されているが、それ以外の英語圏外の国のミステリとなるとあまり翻訳されていない。
ポーランドの作家というと真っ先に思い浮かぶのはスタニスワフ・レムで、世界でも有名な作家だけあって日本でもかなりの本が翻訳されているが、初期の頃はポーランド語からの翻訳ではなく、他の言語に翻訳されたものから日本語に翻訳されたものが多々あった。それだけポーランド語というのは難しいのか、あるいはポーランド語の翻訳できる翻訳家が少ないのかもしれない。
というわけで今回のジグムント・ミウォシェフスキの『怒り』もポーランド語からの翻訳ではないのだが、それはともかくとして三部作の三作目がいきなり翻訳されたのは、やむを得ない事情があるのかもしれないが、もう少しなんとかならなかったのだろうかとおもってしまう。というのも解説によればこの一作だけしか翻訳予定がないというわけではなく、このあと一作目と二作目も翻訳予定であるというのだ。
しかし、本が売れないという昨今の事情を考えると、いくら予定はあるとはいえ、売れなかったら続きは出ない可能性も高いので、それを考えると、三作目をいきなりだしてしまうのは仕方ないだろう。
事情はどうであれ三作目がいきなり出てしまうことに不満を持ってしまうのは、それだけ面白かったからで、特にラストの展開を読まされてしまうと、この話だけではなく、もっと何作か主人公の活躍を読んだ後でのこの三作目のラストであったのならばもっと衝撃度は高かったのかもしれないと思ってしまうからだ。
工事現場から白骨死体が見つかる。ポーランドでは第二次世界大戦中のドイツ兵の死体が見つかることが多いので、今回も数十年前のドイツ兵の死体だと思っていたらなんと10日ほど前まで生きていた人物の白骨死体ということがわかる。
なかなか派手な展開だ。
誰が犯人なのかという以前にどうやって白骨化させたのかというのが謎でもある。
が、派手な事件のわりには展開はのんびり、いや地道で、主人公はとにかくいろいろな事柄に対して怒っている。タイトルの『怒り』は主人公の怒りでもあるのだが、それ以外の含みもある。
上下巻のうち上巻はあまり進展はしないのだが下巻に入ると急転直下、物語が加速し始める。意外な犯人と意外な結末。いや意外というか唖然とするような奈落の底への一直線で、ポーランドという国でもこういう考え方をする人はいるのだなといろいろと考えさせられる物語だった。

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