今回は、女装するのが好きな小学生の男の子が主人公と関わってくる。
女装が好きだからといって、必ずしもトランスジェンダー、自分の性別に違和感を感じているというわけでもない。そして男の子が好きなわけでもない。
女性ばかりの家で育った彼だが、そのせいで女装が好きになったとも言いきれない。
そして彼の女装が似合っている、つまり女の子として可愛く見えるのはまだ彼が大人になりきれていない小学生という年代であり、いずれ成長し、男と変化していくということも理解していて、そして停めることのできない時間の流れにも苛立ちに似た思いを持っている。
読んでいてすごく不思議な、そして繊細な感情を描いている。
よくもまあこんな複雑な感情を描くもの、いやそこまで切り取ることができるものだと恐れ入るしか無い。
どんなにうまく立ち振る舞ったとしても、壊れてしまう薄い薄い硝子のような感情を前にして、それに気がつくことのできない主人公は、やがて彼を傷つけてしまう。
人と触れ合うという行為は、相手を傷つけてしまう、あるいは自分自身が傷つけられてしまうということを避けることができないのかもしれない。
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