同じ本を二度三度買う

たまにだが、同じ本を買ってしまうことはあるかと聞かれることがある。
「ある」と、答えると、思っていたとおりの答えが返ってきたという表情をしてくれるので、こちらも相手の期待通りの返答ができたということで少しうれしくなるのだが、それはともかくとして、同じ本を買う場合、買ったことを忘れてしまってもう一度買う場合もあるけれども、意図的に同じ本を買う場合もある。
間違って買ってしまったのは今までで一冊だけ。
折原一の『丹波家の殺人』だけだ。
これは過去に講談社文庫から『丹波家殺人事件』という題名で出ていたのを買ったのだが、それから数年後、今度は光文社文庫から『丹波家の殺人』と改題されて出たせいだ。
単行本が文庫化されるような判型が変わるときに改題されるということはたまにある。売れている作家の場合は単行本が文庫化される確率が高いので文庫化された時に買う事が多い。なので文庫化されたときに改題されるような場合はわりと未然に防ぐことができるのだが、文庫本が別の出版社から出し直しされる場合は買う前にチェックしないと二重に買ってしまう場合がある。
そんな感じで意図せずに買ってしまった場合は悔しいのだが、逆に意図的に買う場合は平気である。
ではどういう場合に意図的に同じ本を何冊も買うのかといえば、買ったけれども読まずに積読にしてしまい、それから歳月が経ち、急に読みたくなった場合だ。部屋の中にあるのであればまだしも、倉庫の段ボール箱のどこかにある場合、発掘するのはほぼ不可能である。そういう場合は手っ取り早く買ってしまう。
今日泊亜蘭という作家の『光の塔』がこの場合で、読みたくなったけれども一冊目が見つからなかったのでネットオークションで二冊目を手に入れた。後日、あっさりと一冊目が見つかったのだが、じゃあ後悔したのかというとそんなことはなく版が違っていて表紙違いで解説も違っていたので逆に良かったと思った。
その他に、一度絶版となったあとで復刊した場合に解説が変わっていたりあるいは収録作品が追加されていたりといった場合、買ってしまうこともある。
上記の『光の塔』も既に手元に二冊あったが、解説が追加されたちくま文庫版が出たので三冊目を買ってしまった。
キース ・ロバーツの『パヴァーヌ』という本も、出るたびに解説が追加されたせいでサンリオSF文庫版、扶桑社版、ちくま文庫版と三冊持っている。
しかし、どれも表紙が異なっていたり、版元が異なっていたり、中身が微妙に異なっていたりするので、厳密に言えば別の本である。
まったく同じ本を買ったといえば石川喬司の『夢探偵―SF&ミステリー百科』と内藤陳の『読まずに死ねるか!』がある。前者は『SF・ミステリおもろ大百科』を文庫化したもので、もちろん『SF・ミステリおもろ大百科』も持っている。この本は長いこと僕のバイブルで、読みたくなった時に手元に見つからなかったので買ってしまうということをしてしまう。
こういうことも電子書籍に移行していくと少なくなっていくので、読みたくなった時にすぐに読むことができる反面、少し寂しい気もする。

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