菜時記 霜月/癸巳

私の人生は7年前から変わってしまった。と妻はいう。
それは僕が妻を医療保護入院させた日のことをいっている。
しかし、あれから8年経った。妻が7年前といっているのは単なる勘違いでしかないのだが、僕には訂正してあげる勇気はない。それに僕が訂正しようがしまいが妻にはやがて10年前といわなければいけない日がやってくる。
菜時記 霜月/癸巳
週末もまた台風が近づいている。
今日は妻の通院日なので気が重い。
一番気が重いのは妻なのだろうけれど、妻は病院で本当のことを話さない。本当のことを話してしまうとまた入院させられてしまうと思っているからだ。だから表面上は元気に明るく取り繕って他愛もない話しをしてその場をやり過ごす。僕が妻の本当の状態を話すべきなのだが、それでは妻の診断にはならない。どこまで話せば良いのか、どう話せば妻は安心してくれるのか。
少しでも妻が楽しい気分になってくれそうな物を買うことができるか考えながら店に入る。
キャベツが1個84円。これだったら1個まるごと買っても高くはないので買うことにする。店頭ではじゃがいもと玉葱の詰め放題が行われている。300円なのだが、袋の大きさを見ると、目一杯詰め込んだとしてもそれぞれ欲しい分量を詰めることができそうもないので、今回は諦める。
麺類が一袋だと278円、二袋で540円というものがあった。サンマーメンがあったので、妻が喜ぶかもしれないと思い買うことにする。麺類2袋で540円は予算オーバーだが、他でその分を帳尻合わせをすればいいだろう。とその時は思ったが、後で考えるとサンマーメン一袋だけ買えばよかったことに気がつく。
長ネギは2本で213円だったので諦める。
精算後、地元野菜の店へ寄る。
長ネギが138円、人参は3本で97円と寄ってよかった。
と、喜んだのはそこまでで、妻の通院後はいろいろと大変だった。

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