四人の女

通常、ミステリ小説というと犯人が誰なのかを探す小説なのだが、パット・マガーの場合、犯人が誰なのかを探すミステリよりもそれ以外の誰かを探すミステリをたくさん書いたことで有名だ。
誰かというのは、被害者だったり、探偵だったり、目撃者だったりだ。
そもそも、事件というのは被害者が見つかることによって発覚するのだから、被害者がだれなのかわからない状態であれば事件など起こってはいないのではないかと思うのだが、こういう変な話を書くパット・マガーの場合は、被害者がわからない状態でも事件は起こって、しっかりとミステリとして成立する話を書く。
よくよく考えてみれば、ミステリというのは犯人を探す話というよりも謎を解く話なのだから、被害者が誰なのかという謎さえ提示できればそこからミステリは始まる。
『四人の女』では被害者が誰なのかということが謎の焦点で、冒頭で誰かが死ぬ。死体を見つけた人たちはそれが誰なのかわからないので、その時点では誰が死んだのか読者もわからない。
で、そこから話は過去に遡り、とある男が殺人を企むところ場面になる。誰を殺そうとしているのかはその男しか知らない。
被害者になる予定の人物は四人の女性。
男の別れた元妻、現在の妻、愛人、そして婚約者。
現在の妻がいるのに婚約者もいるというのは一体どういうことなのかと思うのだが、男は今の妻と別れて婚約者と結婚しようとしているのだ。つまり今の妻とは離婚協議中ということである。
しかし、よくもまあ、こんなめんどくさい関係の四人という設定を作り上げたものだと思うのだが、こんな面倒な関係のせいで、誰を殺そうとしているのかわかりづらくなっている。
単純に考えると、別れた元妻を殺す理由が一番なさそうなのだが、物語が進んでいくと、この元妻が男が誰かを殺そうとしているのではないかと気がつくのである。そこから考えると、一番の邪魔者となるのが元妻で、とりあえず元妻を殺しておいてから、本来の目的の誰かを殺す、という展開も想像できる。
誰を殺そうとしているのか、誰が死ぬのかというポイントに向けて進む物語はスリリングである。

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