前々から気になってはいたのだけれども、なかなか読む勇気が出せない漫画だった。
田舎町の、今は使われなくなった火葬場から老夫婦の焼死体がみつかる。妻の方は認知症と糖尿病を患っており、車椅子が欠かせない状態。そしてその妻を夫が介護をしていた。
介護疲れからの心中としてこの事件は一つの解決を得る。
というあらすじである。
いずれ自分の身にも訪れる未来を描いたとも思える内容だ。どうすればよいのか答えを見いだせていない状態のなか、こんな物語を読むことができるのかといえばおそらくそれは辛い読書となることは容易に想像がつく。だから読むことができなかったのだが、同じ作者の次の作品が単行本化され、同時にこの『よろこびのうた』も電子書籍で半額近い値段で売られたので勢いに任せて買ってしまった。
買った以上は読まなければいけない。
この物語の中に僕と妻の未来が描かれていたとしても、その答えが描かれているわけではない。そもそも、この物語の主人公である老夫婦は焼身自殺という手段を選んだのである。では僕たち夫婦も焼身自殺という手段を選ばなければいけないのだろうかといえはそんなことはない。
読み始めてみると、絵柄の雰囲気もあってそれほど重苦しくはない。
絵柄に救われている部分は多分にある。
老夫婦の心中から半年ほど経って、一人の記者がこの事件を調べ、記事にするためにこの町にやってくる。
そして調べていくうちにこの事件が介護疲れからの心中ではなかったことを知るというのがこの物語の展開で、老夫婦は死という手段を選ばなければならなかったけれども、それは決して不幸だったわけではなく、むしろ幸せな出来事、いや、そこに至るまでの過程は意外なほどに幸福だったことがわかる。
はたして僕たち夫婦は、ここまで幸せな死を手に入れることができるのだろうか。
読み終えてそう思った。
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