本棚探偵最後の挨拶

ミステリ好きな作家が本を書くと、シャーロック・ホームズの物語にちなんだ題名を付けることがある。ようするに『シャーロック・ホームズの冒険』にちなんで『○○の冒険』という題名をつけるのだ。
僕はシャーロック・ホームズの物語はほとんど読んでいないし、ついでに言えば江戸川乱歩の小説もほとんど読んでいないのでミステリが好きというのはおこがましい気持ちもあるのだけれども、『○○の冒険』という題名を付ける行為は嫌いではない。同じジャンル小説でありながらSFの場合はそういう古典にちなんだ題名をつけることが少ないのでSF好きとしてはミステリの世界が羨ましい気持ちもあるくらいだ。
喜国雅彦の<本棚探偵>シリーズもシャーロック・ホームズの物語にちなんだ題名をつけていたのだが四作目で一応の完結となった。まあ、こちらは小説ではなく本にまつわる作者のエッセイ集なので続けようとすればいくらでも続くことができるのだろうけれども、さすがに四巻目ともなると息切れが感じられてくる。
そもそも、一巻目は函入りで、月報付きは当たり前として作者の検印まで付いているという凝った造本で、二巻目は蔵書票付き、三巻目ともなると二分冊で切ってたたむと豆本になる月報が付いているという凝りよう。
ますますエスカレートしていく本の体裁に期待は高まる一方なのだが、四巻目はカラー口絵と少しパワーダウンしてしまった。もちろんやりたいこととコストとの兼ね合いもあるので商業出版としてはこのあたりが限界なのかもしれない。
その代わりに今回は綾辻行人の『暗黒館の殺人』を私家版として製本してしまうというエピソードが収録されている。さすがに僕もここまでやろうとは思わないけれども、読んでいて楽しい内容だ。
さらには前巻に引き続いて日下三蔵家訪問記があり、こちらも読んでいて愉快な内容だった。

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