ゲリラ豪雨

ここ数年、雨の降り方が変わってきていて、突然豪雨となることが多くなった。
子供の頃はそんな雨などめったになく、気候の変化というか、異常気象というのか、すこし厄介な降り方になってきている。
しかし、少し前に読んだ、都筑道夫の『前後不覚殺人事件』の中で、岡本綺堂の随筆の話があって、それによると、明治のころはゲリラ豪雨だったということなのだ。
都筑道夫の作品なので、記述に間違いはないだろうけれども、とりあえず原典を探して読んでみようと思った。
幸いなことに岡本綺堂は著作権が切れているので、彼の作品は青空文庫に収録されている。とはいえど、小説ではなく随筆なので、収録されているのかわからないがとりあえず、ネットで検索してみたところ、そのものズバリがわかった。
岡本綺堂随筆集に収録されている「綺堂むかし語り」の「雷雨」という随筆であった。

むかしの夕立は、今までカンカン天気であったかと思うと、俄かに蝉の声がやむ、頭の上が暗くなる。おやッと思う間に、一朶の黒雲が青空に拡がって、文字通りの驟雨沛然、水けむりを立てて瀧のように降って来る。

むかしの夕立の男性的なるに引きかえて、このごろの夕立は女性的である。

もっとも、明治のころの雨の振り方が近年のゲリラ豪雨と同一なのかといえば厳密に言えばそうではないのかもしれないが、面白いことに岡本綺堂はゲリラ豪雨のほうを楽しんでいるのである。江戸っ子らしいといえばらしいのだが、いわれてみればそうなのかもしれない。
そう考えると、ゲリラ豪雨もゲリラ豪雨で楽しみ方があるのだろうし、数十年後に、気候が変化してゲリラ豪雨がなくなった時代に僕自身も、昔はゲリラ豪雨というさっぱりとした雨が降っていたんだよと岡本綺堂のようなことを言っているのかもしれない。

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