表題作は、標高3000メートルを超える山を登山していた親子が山から降りてみたら誰もいなくなっていたという話。標高2800メートル以下の高さで生活していた人々は原因不明の超常現象によって消えてしまったのだ。「マリー・セレスト事件」を彷彿させる展開でもあるが、ここで起きているのは世界レベルの消失なので規模が大きい。
その他、「霧が晴れたら」という題名の短編があったりするせいで、小松左京の短編「霧が晴れた時」を思い出させる。それゆえにだろうか、よくも悪くも70年代にSF作家が中間雑誌に書いていたような印象が抜けきれず、懐かしさと同時に物足りなさが伴う話が多い。
どの話も何らかの超常現象を扱った話で、その点でいえばホラー小説といったほうがいいのだろうけれども、ホラーとしてみるとそれほど恐ろしくはなく、作中で起こる超常現象に対して合理的な説明はされないものの、超常現象に対して合理的な解釈が行われるので読んだ味わいとしてはSF小説といってしまっていい感じもする。
ただ、エンターテインメントとしては作者の主張が強く出すぎて登場人物に語らせすぎな部分もあるので、そのあたり、もう少しあいまいなままにしてくれたら自分の好みにあう話だった。
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