電子書籍化されていたこともあって、久しぶりに読み返してみた。
『全戸冷暖房バス死体つき』で登場した面々が再び登場する。
『全戸冷暖房バス死体つき』は短編集だったが、今回は長編で、語り手は同じ滝沢紅子なのだが、前作で探偵役だった猿紘一は登場しない。
滝沢紅子の父親は同じ作者の別シリーズ、<退職刑事>シリーズの主人公であるという設定だったようだが、長編ではそのあたりは明確にはされず、どちらかといえば『全戸冷暖房バス死体つき』と『髑髏島殺人事件』以降の物語は、登場人物は同じであっても、完全な同一ではなくパラレルワールドのつながりのような感じとしてとらえたほうがいいのかもしれない。
それはさておき、髑髏島などとおどろおどろしい題名が付いているが、舞台となる場所は中央線沿線にあるメゾン多摩由良という12階建てのマンションであり、語り手が滝沢紅子という女性なので題名から想像するような雰囲気はまったくない。
殺人事件はやがては連続殺人事件へとつながっていくのだが、強いていえばマンションの住人全員が容疑者であり、それでいて犯行の動機はさだかではない。そもそも連続殺人事件なのかということもあやしいのだが、暗中模索の中、マンションに住むミステリ作家の書いた本、『髑髏島殺人事件』に沿って殺人事件が行われているのではないかという方向へと物語は進み、滝沢紅子たち、今谷少年探偵団の面々は推理を繰り広げる。その結果、捜査はダイイングメッセージの謎へと焦点が当たっていく。
軽い読み心地とはいえ随所に都築道夫らしいペダンティックな小ネタが挟み込まれ、ダイイングメッセージに関する考察がなされていくが、それらがうまく組み合わさっているかといえば微妙なところで、いろいろと盛り込みすぎたせいでどれも中途半端になってしまった感もある。
旧泰然としたミステリに対する新しいミステリとしての形という部分や、より現代的な犯行動機、さらには不自然になりがちなダイイングメッセージに対するシンプルな解答と、個々のパーツは悪くないので、滝沢紅子を主役に持ってきたのが失敗だったのかもしれないのだが、その一方で滝沢紅子たち今谷少年探偵団の面々の軽快な会話と軽妙なテンポは捨てがたい。
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