AIの遺伝子 4巻

人間並みのAIが実現し、さらには人間並みの人工的な肉体も実現した未来。
人間の能力を遥かに超えるものは感情を持たないAIとし、人間と同等の能力のAIは感情を持ちそして肉体も持つ。そして彼らをヒューマノイドを呼び、人間と共存した生活を送っている。その世界で彼らがどういう役割を担っているのかという部分に関しては描かれてはいない。多分、そういったものを描くことを主眼としているわけではないのだ。
人間と同等の能力そして感情を持った存在がどういうものなのかということを描くことによって人間とは何なのかということを描こうとしてる。
主人公はヒューマノイド専門の医師。物語は彼の元に何らかの問題を抱え治療を行ってもらいに来るヒューマノイド達の一話完結の話となっている。
グレッグ・イーガンを彷彿させるような内容もあるけれども、個人的には少し物足りない部分もあって、それはもう少しその先を描いて欲しいと思うところで物語が終わってしまう点だ。
逆に言えばその先は読み手が考える事柄で、作者はそこまでの道筋を用意しただけともいえる。
それ故に、自分の感情とが物語の終わりにうまく合わさったときには何とも言えない余韻を感じさせてくれる。
今回面白いと思ったのは、浮気ばかりをしている男とその彼女の話。彼女のことを愛しているけれども、彼にとっては浮気は別腹なのである。業を煮やした彼女は彼と伴い主人公の病院へ訪れそして彼はある手術を受けることにする。
それは作中では賢者スイッチと呼ばれる。
浮気心が生まれた時、耳の後ろにあるスイッチを押すと、欲望よりも理性が上回り、いわゆる賢者のごとき状態になるのである。
そして一年近くの年月が過ぎる。
浮気を一切しなくなった彼と彼女がハッピーエンドを迎えたかと思えばそんなことはなく、彼女の方が別の男性に心を奪われ、別れてしまうのだ。
彼女の心をつなぎとめていたのは、浮気に対する嫉妬心であり、嫉妬する感情がなくなった時、彼に対する気持ちもなくなっていったのである。
これはグレッグ・イーガンには書けそうもない話で傑作だ。

コメント

タイトルとURLをコピーしました