思わぬ拾い物は平方イコルスンだった。
書店で手にとってパラパラとめくった時には気づかなくって、今回は漫画は無かったか、と思ってしまったのだが、パラパラとめくってみただけでは気が付かない可能性もあるくらいの短編漫画だ。
平方イコルスンに関しては記事を改めるとして、その他としては、安定の円城塔、というかこの人は一体何なんだと思う。伊藤計劃っぽい話を書いたと思えば、今度はラファティっぽい話を書いてしまう。次は何っぽい話を書くんだろうか。
収録作の中で一番を選ぶとすれば、西崎憲の「奴隷」かな。うーむ、どう説明したらいいのか説明するための言葉が出てこないのがもどかしいのだが、この異様な世界でありながら、それでいて現代日本のごく日常の中にただ単に奴隷制度というものを放り込んだだけであって、その制度が成立するための理論的な補強要素などおまけ程度しか描いていないのにもかかわらず、こんな世界を創りあげてしまう素晴らしさ。日常と非日常とが融合していて、マジックリアリズムのようでもあるけれども、マジックリアリズムが求める方向とはまったく正反対のようでもある。
乾緑郎の「機巧のイヴ」も良かったんだけれども、「奴隷」のせいで霞んでしまった。
瀬名秀明の「Wonderful World」は、一読しただけではちょっとよくわからない部分もあるのだけれども、終盤、思わず泣けてしまった。なんだかちょっとこれは卑怯じゃないかと思ってしまった。『NOVA 10』にこの続きとなる話が収録されるので楽しみだ。
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