さりげなく、いや僕が知らなかっただけかもしれないが、復刊していたのがブリジット・オベールの『マーチ博士の四人の息子』だ。
書店で平積みになって、しかもその書店の手書きPOPまでついていて驚いたのだが、こんな地方の街でブリジット・オベールの本が売れるのだろうかという気もした。
とはいえども、僕もブリジット・オベールの小説は今までに一冊しか読んでいない。しかもシリーズ物の2巻目という有り様。
ブリジット・オベールの小説ってあらすじを読んでみるとものすごく面白そうなのだけれども、ブリジット・オベールがフランス人でフランスのミステリであるという部分が読むのを躊躇させてしまっている。べつにフランスに対して毛嫌いをしているというわけではないのだが、昔からフランスミステリが肌に合わない部分があって、面白そうだなと思って読んでみると、今ひとつしっくり来ないということが多々あったからだ。
とはいえども、ここでこうして出会ったのも何かの縁ということで早速買って読んでみることにした。
マーチ博士には4人の息子がいて、マーチ博士とその奥さん、そして4人の息子と一人のメイドが一つ屋根の下で生活をしている。ただひとつ問題があるとしたら、それはマーチ博士の4人の息子の一人が連続殺人鬼だったということだった。
物語はその連続殺人鬼の書いた日記とその日記を盗み読むメイドの手記が交互に語られる形で進んでいく。メイドは4人のうち、誰がその殺人鬼なのかはわからないし、殺人鬼も自分の日記が盗み読みされていることには気がつかない。メイドはメイドで脛に傷を持つ身で警察に関わり合いたくないので、このことを警察に言うこともできない。かといって見過ごすわけにもいかないので義憤にかられて殺人鬼を見つけようとする。
あらすじだけ読むとものすごく面白い物語のように見えるけれども、読んでいくと意外とのっぺりとしている。メイドはメイドでいい加減で、酒ばかり飲んで酔っ払っているし、殺人鬼は殺人鬼でわりと適当な性格だし、というわけでシリアスではなくけっこうぶっ飛んだ会話と雰囲気の物語だ。傑作とはいいきれないけれどもアベレージヒッターというところで、未読の作品も読んでみたくなる。
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