『ブラック・ジャック創作秘話』の作者の新作。
『ブラック・ジャック創作秘話』は面白かったけれども、途中からブラック・ジャック以外の話にもなり、結果としては手塚治虫に関する話となってしまい、終盤は少し失速したかんじで、もちろん手塚治虫に関して何も知らない人にとってはそれでも構わなかかっただろうけれども、描かれるエピソードも時間軸がバラバラで個人的には物足りなくなってしまった。
で、しばらくはこの作者が何を描いているのかあまり気にしなくなってしまっていたのだが、今回出た新作はまあとにかく驚いた。
聴覚障害を扱っているのである。
昨今の漫画はいろいろな障害をテーマにしたものも描かれるようになっているのでそれだけならば別段、驚くべきものでもないし、未読だが同じ聴覚障害を扱った『聲の形』は評判になった。
吉本浩二の絵はお世辞にも綺麗とはいいがたいし、絵柄だけでみれば一般受けはしない絵なのだが、物語ではなくドキュメンタリーとしての場合、それほど不利な絵ではない。
音楽をテーマにした漫画ではいかにして絵で音を表現するかというのが問題点のひとつでもある。逆に無音をいかにして表現するかというのも意外と難しい。
聴覚障害を描くということはこの音と無音を表現しなくてはいけないのだが、この漫画では聴覚障害者から見た漫画の面白さという部分が描かれていて、これがなかなか目からうろこが落ちる思いだった。
音が聞こえないという、外見からは判断できない障害が持つ苦労というのは、同じく外見からでは判断することの難しい精神障害を家族に持つ身としてはよく分かる部分もある反面、聴覚障害に関して知っているようで知らないことが多いことを教えてくれる。
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