かなりシビアな話が多かった。
ファンタジーの世界の設定を使って、その世界に対して現実的な問題をぶつけるという話が目立つ。
最初の話は、勇者が魔王を倒した後の話で、これがゲームや小説、漫画であれば勇者が魔王を倒した時点で世界に平和が訪れ、めでたしめでたしとなり幕を閉じるのだが、九井諒子はその後を描く。さらにいえば、平和を脅かす存在は魔王であるのだが、魔王の他に魔物がいて、まあ普通のファンタジーであれば魔王の手下の魔物がいるのは当たり前なのだが、この魔物たちは魔王が倒れた後でも存在する世界を描くのだ。その結果、勇者は勇者として迎えられながらも、世界は完全に平和になったわけではなく、ただ単純に一番の脅威が無くなったというだけという状態なのだ。それゆえに、勇者には勇者としての祝福が与えられない。
表題作は竜が実際に存在している現代という世界における、竜と人間との関係の物語であり、ここで描かれる竜もまたその存在を肯定されない生き物として描かれる。
描かれる題材はファンタジーの題材なんだけれども、その描き方は論理的であり外挿的でSFなのだ。
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