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- 『三文未来の家庭訪問』庄司創
『アフター0』の岡崎二郎のようなタイプの作風。
短篇集なのだが、わずか三編しか収録されていない。この本の最後に収録された「辺獄にて」はシンプルな構造の物語なのだが、それ以外の二作品は、そんな部分にまでアイデアを注ぎ込むかと言いたくなるような密度の濃さで、特に表題作は表層レベルにおいてはボーイ・ミーツ・ガールという物語でありながらも、そこに男性という性の多様性のありかたというSF的なアイデアと概念の構築と、そこから発生する社会の変貌というものを描きながらも同時に、そこから発生する社会とは別の社会様式というものを設定しておいて、二つの、実際にはもう一つの社会が存在するのだが、それらの社会を混ぜあわせたかたちで主人公の恋の物語を描いている。
およそSF漫画らしくない絵柄なので画力でもってSFの世界を魅せるタイプではなく、思弁の畳み掛けでSFの持つ不思議さを魅せるタイプなので、一度味わってしまえば面白さがわかるが、漫画としては損をしている部分もある。
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