『ブラック・ホール』チャールズ・バーンズ

  • 訳: 椎名ゆかり
  • 著: チャールズ・バーンズ
  • 販売元/出版社: 小学館集英社プロダクション
  • 発売日: 2013/6/26

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オルタナティヴ・コミックというものがある。
といっても、今回のこの漫画で初めて知ったのだが、アメリカにおいて、アメリカの漫画というのはひとくくりにアメコミと言ってしまっていたのだが、そうでもなくって、スーパーマンやバットマンが登場する漫画とは別に、オルタナティヴ・コミックと呼ばれるジャンルの漫画が存在している。
市場規模で言えばアメコミがメジャーであってオルタナティヴ・コミックはマイナーな感じになると思うのだが、そう考えると、このオルタナティヴ・コミックは日本で言えば『ガロ』系の漫画になるのかもしれない。
そう考えると、すこしだけ読みたい気分が萎えるのだが、というのも島田虎之介とか、まどの一哉とかガロ系の漫画を読んではいながらも、基本的は彼らの絵柄があまり好きではないのだ。
漫画といえばやはり絵柄が好みかどうかというのが一番の重大要素で、絵柄が好きになれないといくら物語が面白くっても読むのがつらくなる。島田虎之介や、まどの一哉の絵柄はまだ好きになれる範囲なので大丈夫なのだが、そういうわけでこの『ブラック・ホール』も十中八九、好きになれない絵柄であることは確信を持つことができた。
で、実際にみてみるとやはり好きにはなれない絵柄だったが許容範囲だったので安心した。いやだからといって実際に安心できるわけではないんだけれども。
ティーンエイジャーの間にだけ性交渉によって広まる奇病。直接死にはつながらないものの、その奇病は感染者の肉体を変貌させる。ある者はイボのようなものができ、ある者は尻尾が生え、ある者は喉にもう一つの口ができる。どんな形で発症するのかは個人個人異なるのだ。
そのような事態の中、物語はあくまでとある高校の一部の生徒の中だけの話に終始する。これだけの事態になっていながらも、物語の中では国家レベルでの対応とか、社会の様相などはまったく描かれない。奇病そのものが問題なのではなく、あくまでそのような事態の中での個人レベルの問題、それは誰それのことが好きとか誰それのことが嫌いという恋愛の話に終始して、そしてしかも登場人物たちは恋愛に奥手な人物ばかりなので、うじうじと恋愛問題のことで悩んでいるばかりなのだ。もっとも病気のこともちょっとは悩むのだけれども。
そういう意味では、非日常的な状態の世界の中で日常の世界を描いた漫画であり、絵柄はどうにも好きにはなれないけれども、読むだけの価値はあると思う。

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