ロマネスク

剣は登場するけれども、魔法は登場しない異世界ファンタジー+ミステリ。文庫にして300ページほどのコンパクトにまとまった本だ。
ある使命を受けて砂漠の中にある架空の国に訪れた主人公が巻き込まれる事件の顛末を描いた物語なんだけれども、解説にも書かれているようにテンポよく進むので次から次へといろいろな出来事が起こる。架空の国で架空の文化の社会を舞台としながらも基本的には不思議な要素は乏しいのでこの世界の成り立ちといった説明ごとに記述が割かれることも少ないので純粋に物語の進み具合だけを楽しむことができる。もっともそれ故に、異世界の雰囲気を味わいたい人には物足りないかもしれないが、ミステリを楽しむ分にはこのぐらいがちょうどいいのかもしれない。
主人公の視点で進む物語の合間に、別の人間の視点の物語りが挟まれ、そこで語られる物語と、その語り手が誰なのかという謎を保持しつつ進む中で、主人公の使命と現在進行形で起こる事件とが徐々に重なりあい、事件の全貌が見え始めてくる終盤の展開は、それまでの勢いを維持したまま早いペースでラストまで突き進む。異世界ファンタジーとしてもミステリとしても楽しむことが出来た一冊だった。

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