菜時記 長月/庚子

統合失調症を発症していらい、人の大勢いる場所を恐れるようになった妻は、買い物に行くことも困難になった。
だから僕は妻の代わりに一週間分の食料品や日常品を買うために週末、一人で買い物に出かける。
精神障害を持つ人と共に生きるということは、僕の場合でいえば平穏と悲しみの間を行ったり来たりする生活である。楽しむということはとうの昔に捨て去った。
楽しもうという気持ちなど持たないほうが楽だからだ。
菜時記 長月/庚子
歯医者の予定はあるけれども、午前中に関していえばいつもどおりのスケジュール進行。
レタスは198円と高騰している。もっともこの値段がいつもの値段なので、平均値に戻ったというところだが、ここは148円のグリーンカールを買うことにする。
長ネギが2本で178円と高い。かといって地元野菜のコーナーにも置いていないし、この値段なら妥当な金額だろう。今までが安すぎたのだ。
地元野菜のコーナーでは茄子が5本で150円、ほうれん草は140円といつもどおりの値段で、そろそろ夏も終わりという気配が感じられる。
これといった目ぼしいものもないままにレジで精算をしていたら、店の人がお惣菜のパックを床に落としてしまう。密封されたものであったならば取り替えなくてもいいですよというつもりだったのだが、あいにくと密封されているものでもなく、中身は崩れてしまっている。
消え入りそうな声で申し訳ありませんという店の人に、おもわず、こちらのほうこそ、落としてダメになってしまうものを買ってしまって申し訳ないという気持ちになってしまう。
店の人は代わりのものを取りに行くのだが、同じものがまだ売られていればいいな、売り切れていたらさらに気まずい思いをしてしまうだろうと思っていたら、まだ売り切れていなかったのでホッとひと安心する。
次の店では、ちょっと量が多いなと思いつつも6個入りで518円の梨を買ってしまう

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