作者のツィートが少し話題になったけれども、前巻のあとがきでも匂わせていたとおり、不幸な形となってしまった。
6巻で完結する予定の物語が5巻で終わってしまったということである。
といっても、最後のこの巻で5巻と6巻の内容を圧縮して書き終えたというわけではなく、6巻で書かれる予定の話は書かれず終いとなったということだ。
しかし、読み終えてみれば中途半端なところで終わったというわけではなく、この巻に関していえば落ち着くところに落ち着いている。ただ、この後に続くはずの物語が書かれる可能性は少ないというだけだ。作者はなんらかの形で発表するつもりだと書いているのでその日がくることを気長に待つこととするしかないのだが、残念なのは作者がライトノベルをもう書かないと宣言したことだ。
たしかにライトノベルというジャンルのどまんなかに位置する物語を書く作家ではない。
僕が最初にこの作家の本を読んだのは『三月、七日。』でずいぶんと繊細な物語を書く人だという印象が強かったが、一瞬で気に入った。しかしその次に書かれたのは『pulp』という前作とは正反対というかまったく違う方向の物語だった。その後『チョコレートゴシップ』で一般文芸の世界へと行くかと思ったのだが、いろいろと難しかったらしくライトノベルの世界にそのまま居続けたのだが、こういう物語が書かれる可能性があるからライトノベルというジャンルは面白いと僕自身は思っていても、それが売上に繋がるかといえばそんなことはなく、現実は厳しい。
三人の姉にいじめられる日々を送っていた主人公が、彼女たちの手から逃げるために遠く広島の全寮制の高校に入学する。そこで同室となった少年は性同一性障害、身体は女性でも心は男性という少年だった。そして今まで女性不信だった主人公は彼に恋をしてしまう。彼が好きになったのは肉体なのかそれとも心なのか。
というただでさえ難しい設定をライトノベルという形で書き上げた物語はライトノベルだからできたという部分もあるかもしれないが、『三月、七日。』と同様に繊細な物語だった。
書かれるかもしれない6巻目は再会の物語だ。
主人公たちがどのような形で再会するのかは想像するしかない。
コメント