かけられる言葉

書店で文庫本などを買うと精算時に「本にカバーはかけますか」と聞かれる。
僕は基本的にブックカバーをかけない人間なので、「いいです」と言って断る。
もっとも、この時の「いいです」という返事の仕方が妥当な言葉使いなのかは疑問に思うところがある。殆どの場合はこのように言えばカバーをかけることなく袋にいれてくれるのだが、まれにカバーを取り出してかけてくれる場合がある。
「いいです」という言葉がうまく伝わらなかったのか、それとも何らかの事情で僕の返事が頭のなかから吹っ飛んでしまい、いつものごとくカバーをかける工程に進んでしまったのかわからないのだが、そういう時は甘んじてカバーをかけてもらうのだが、それはさておいて、「いいです」という言葉をカバーはかけなくてもよいというふうに理解してもらった場合に店員さんの返事は「恐れいります」なのである。
本を買って店を出る時、店員さんは「ありがとうございました」と声をかけてくれる。本を買わないまま店を出ても「ありがとうございます」と言われる時もあるのでその時は申し訳ない気持ちになるのだが、本を買った時には「ありがとうございます」であるのに対して、ブックカバーをつけなくてもよい時には「ありがとうございます」よりも上の「恐れいります」なのである。
向こうからすれば深い意味などなく、単にカバーをかけるという手間をなくしてもらったことに対するお礼の気持ちのようなものなのかもしれないけれども、こちらからすると、面倒なブックカバーをつけてくれなくて助かっているという気持ちもあるので恐縮してしまう。
で、申し訳ない気持ちになるので精算して一目散に退場しようとすると追い打ちをかけるように「ありがとうございました」という言葉がかけられる。

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