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- 『九月十月』島田虎之介
島田虎之助からはもう一冊。
『ラスト・ワルツ―Secret story tour』のあと、『東京命日』『トロイメライ』『ダニーボーイ』と、島田虎之助は、ありえたかもしれないもう一つの物語という偽史の物語を発表した。そして『ダニーボーイ』の発表後、しばしの沈黙をする。その間、まったく作品を発表しなかったというわけではなく短編をいくつか発表してはたのだが長編は描かれなかった。そしてその沈黙後に発表された『九月十月』はそれまでの物語とはうってかわって、じつに意欲的な作品だった。それまでの過剰に語る物語は息を潜め、絵の奥底に潜り込んでいる。コマ割りや構図、そこに描かれる絵の中からどこまでその物語を手元に引きずり出すことができるか。読者に挑戦するかのような作品でありながらも、そこで描かれる世界はけっして挑戦的な世界ではなく、それでいて常に読者を不安に導かせようとするある種の恐怖が存在し、そしてこの先、島田虎之介はどこまで行こうとするるのだろうか期待と不安を抱かせる作品だ。
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