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- 『千年万年りんごの子(1)』田中相
- 『千年万年りんごの子(2)』田中相
- 『千年万年りんごの子(3)』田中相
田中相は風通しのよい絵を描く。読んでいて、たとえそこで描かれている内容が重苦しいものであっても、さわやかな風が絵の中を流れ、重苦しさを少しだけ和らげてくれる。
こんなふうに書くと、それは長所ではなく欠点ではないかと思うかもしれないが、欠点ではないのだ。
閉鎖的な村に婿養子に来た主人公。そして、食べてはならないりんごの実を食べてしまったがために、おぼすな様とよばれる神様の嫁としてその身を捧げなくてはならなくなった主人公の妻。
土地に根付く神様の力は、その土地のある範囲のみ影響力があると考えた主人公たちは、その土地を離れ、東京へと逃げることによって、元凶である神様、おぼなす様の影響の範囲から逃れようとする。しかし、その土地に住む人達は全てこの神様の影響の範囲下にあり、おぼなす様の影響はそこに住む子どもたちおよぼし始める。結果、主人公たちは再び村へと戻らざるを得ない羽目になってしまう。
そして主人公の妻は少しづつ若くなっていく。決してハッピーエンドにはならないこの物語を救いのある物語に仕上げているのは、この風通しの良い田中相の絵である。
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