私を連れて逃げて、お願い。

世間知らずな主人公二人の逃避行は綺麗に三巻で完結した。
行く先々でかれらが出会うのは、主人公達の世間知らずっぷりとは対局にあるといってもいいくらいに人生の酸いも甘いも、いや酸いの部分しか吸収していないような人物ばかりで、水と油のごとく決して合わさることはないはずなのだけれども、普段は分離しているサラダドレッシングも、振り回せばまじり合わさったかのように美味しいものにへと変化していくように、奇妙な展開を起こしていく。だからといって二人が急成長していくかというと流石にそんな都合の良いことなど起こらなく、あくまで二人は世間知らずなままに己の愛を貫こうとして、周りの人たちに対して微妙に食い違いながらも、なんとなく噛み合わさっているかのような会話をし続ける。
とはいえども、主人公の一人は強盗殺人に加担した身であり、そして指名手配中。どう考えても主人公二人の行末にはハッピーエンドなど存在しないはずなのだけれども、エキセントリックな登場人物の行動ばかりに惑わされて、思わず見過ごしてしまった救いのある場所へと物語は着地し、世間知らずな二人もバカップルっぷりは変わらないまでもそれなりに成長し幸せをつかむ。
愛するということは人を成長させるのだ。

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