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- 『青い空を、白い雲がかけていった』あすなひろし
編集部の意向で別の連載をはじめることになったために物語としては未完のままとなってしまているが、長編ではなく連作短編なので特に問題はない。ただ、最後のページまで辿り着いた時、登場人物たちのその後が気になる。
あすなひろしのその絵は緻密で、どこにも隙のない完成された絵だ。その線はシャープでハッとするくらい鮮やかな絵だ。そして要所要所で登場人物の等身を大胆に変化さる。コミカルなシーンで等身を下げて描く作風は、おなじ漫画家、たがみよしひさの前身ともいえる。おそらくたがみよしひさはあすなひろしの影響を受けていたのではないだろうか。
決して悲しい話ではないのにどこか悲しさが漂っている。これを糸井重里は「真っ昼間の悲しさ」と言い表したのだが、これもまたお見事としかいいようがない表現である。登場人物の、どこか、ここではない場所を求めるかのようなまなざしの一コマがこの悲しさなのひとつなのだろう。
あすなひろしは、登場人物が抱えている悲しみを、明るい場所へと引っ張ってくるのだ。それはおそらく、悲しくても明るい場所で立っていようよという、あすなひろし流のはげまし方なのかもしれない。
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