これがこの作者のデビュー作であるのだが、最初から傑作だった。
なんといっても、キャラクターの絵柄にあった背景が素晴らしい。写実的でありながらも、そこにいる人達がその世界にうまく溶け込んでいる。
主な登場人物は二人。
一人はごく普通の19歳の青年。もう一人は彼と一緒に暮らしている不老不死の女性。彼女はかれこれ400年近く生きている。
彼女が何故不老不死となったのかは描かれてはいないし、これはそういう物語ではない。
彼女が自らの意志で持って不老不死となろうとしたのか定かではないのだが、今現在は死にあこがれている。一方で青年のほうは彼女のことが好きで一緒に暮らしたいと思っている。そこで彼女は自分と一緒に生活をする条件として青年に、毎日一回、自分を殺すことを条件として課した。青年は彼女の言う条件を忠実に守っている。もちろん、生き返ることが判っていながらも彼女を殺さなければいけないという苦悩を共にしてだ。
ある時、彼女は死ぬための画期的な方法を思いつく。死刑が確実な犯罪の犯人として名乗りでて、そして国に殺してもらう。それも絞首刑ではなく、灰になるまで焼きその灰をコンクリートに混ぜ、固まった後、徹底的に砕いて海に撒くのである。
しかし、彼女の願いも虚しく数年後に彼女は生き返る。仕方なく彼女は青年がどうしているのか尋ねるのだが、青年は半年ほど前に亡くなっていた事を知る。
そこまでが第一話である。残りの紙面を使って、彼女と青年との出会いと、第一話に至るまでの物語が描かれ、そして、最後にその後へと続く。
おおよそ結末がどのようになるのか予想はつくのだが、この作者のうまいところは結末を描いていないところである。二人がどうなったのかは読み手に委ねられた状態の結末は、悲しくもありそれでいて淡くもさわやかで不思議な余韻を残す。
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