『非Aの世界』に引き続き、その続編『非Aの傀儡』を読んだ。
こちらも30何年ぶりの再読で、ここまでくるとどんな内容だったのかすら忘れてしまっていたので、初読といっても構わないだろう。
『非Aの世界』が中村保男による翻訳だったのに対してこちらは沼沢洽治による翻訳で、間を置かずに続けて読むと、文体も雰囲気も変わっているのが判る。どちらがいいのかは原文を読んだことがないので判断はできないのだが、『非Aの傀儡』のほうが読みやすい感じもする。
さて、主人公ギルバート・ゴッセンは今回は頭のなかに存在する予備脳の持っている能力を全開まで使いきってまさに超人と化している。小数点以下20桁まで相似させることによって、自分自身はおろか、自分以外の物でさえ瞬間移動させることができるので、気に入らない奴は牢獄へ移動させてしまうし、銃で撃たれようとしても撃たれる瞬間に相手の持っている銃をどこかへ移動させてしまう。物語早々、主人公の乗ったエレベータが事故で墜落してしまうがその瞬間、主人公は自分の体を安全な場所へ瞬間移動させていとも簡単に難を逃れてしまう。
これでは主人公があまりにも超人過ぎてつまらないではないかと思うだろうけれども、そこはヴァン・ヴォークトである。主人公のこの能力に一定の制約を設けて、さらには読み手の想像の斜め上を行くような展開でもって、超人的な主人公を次から次へと危険な状態に合わせ続ける。
先が読めないというか、章の終わりには主人公は窮地に立たされるし、その一方で次の章では予想もつかない手段によって窮地を凌ぐ。そもそも前作の冒頭で主人公の妻とされていた女性は前作の途中で大統領の娘だという事がわかるのだが、今回の話では彼女は本当は地球連邦を狙う敵のボスの妹であるという衝撃的な真相があきらかになる。地球連邦の大統領の娘でありながら地球連邦を狙う敵の妹なんて、こんな設定、はっきりいって破綻しているとしか思えないのだが、このような問題など些細な問題であって、ヴァン・ヴォークトの圧倒的なハッタリの世界の前においては瑕疵にはならない。
そもそもヴァン・ヴォークトの小説を読むことは夢を見るようなもので、目が覚めて振り返ると確かに破綻しているかもしれないが、夢を見ている間は矛盾すら感じないまま楽しんでいるのと同じだからだ。
『非Aの傀儡』


コメント
この本がAmazonで買えると紹介されていたので
ついつい買ってしまった。
読み始めてはみたものの
さて、全部読めるかどうか自信がなくなってしまう。
字が小さいし、小生の頭の程度には難しそうだ。
まあ、どこまで読めるか挑戦してみましょう。
ありがとうございました。
五十八さん、こんにちは。
<非A>シリーズは難解な部分があるので、ヴァン・ヴォークトの小説を初めて読むのであれば『宇宙船ビーグル号の冒険』のほうがおすすめなのですが、細かいことは気にせず、わからない部分はあまり深く考えずに読んでもらうといいかと思います。
ではそうさせていただきます。(^^)
ありがとうございます。