記事タイトルにひかれて初めてこのページをご覧になった方は、こちらを最初に御覧ください。
- 『Blow up!』細野不二彦
細野不二彦は職人のような漫画家だと思う。少年漫画でデビューし活躍後、読者層のターゲットを上げ青年漫画へと舞台を移し、そこでも活躍しつづけている。おそらく自分が描くもの、興味を持っているものがどの年齢層にマッチしているのかというものを自覚しているのだろうと思う。最初は『ジャッジ』全2巻を選ぼうかと思ったのだが、あらためて読みなおしてみると作者自身があとがきで、いつか機会があったら描き直してみたいと書いている。物語そのものも完結しているわけでもなく連作短編という、いつでも続きを描くことができる形式でもあるので候補から外した。となると『あどりぶシネ倶楽部』かこの作品のどちらかにするしかなく、描かれた当時の時代的な雰囲気が残っている『あどりぶシネ倶楽部』よりは時代臭の抜けたもう少し普遍的な『Blow up!』の方を選んでみた。
主人公はサックス奏者。それなりに腕はあるけれども一流のサックス奏者になるために名門大学を中退し、日々の生活にも苦労する貧乏な青年。
そして一流を目指しているといっても、自分の才能を信じているわけでもなく、ただ自分の夢だけにしがみついて生きている。しかし、それは決して無様ではなく、生きているということの力強さである。ジャズに関する様々な知識も盛り込まれ、読後、思わずジャズを聞きたくなってしまう。
そしてなによりも、何のために音楽をやるのかという質問に、主人公が最後に見つける答えが素晴らしい。
「自分の生まれた場所より、一歩でも遠くへゆくために」
オリジナルは全2巻だが後に一冊にまとめられた。
コメント