『わたしのカイロス』

主人公はいわれなき罪によって咎人として「剣闘刑」を科せられた少女。
「剣闘刑」とは咎人同士、あるいはそれ以外の生物との戦いを強いられる刑罰で負ければその時点で死ぬこととなる。逆にいえば勝ち続ければ生き続けることができるのだが、主人公はごく普通の少女で武術の達人でもないし戦いの仕方すらもわからない。
咎人はスターゲイザーと呼ばれる空間転移方法を使って様々な惑星に移動し、そこで運営者によって決められた組み合わせで戦うこととなる。そして勝ち続けていけばやがて恩赦を受けることができるといわれている。
しかし、恩赦を受けて解放される以前にどう考えても最初の戦いで死ぬしかない主人公だが、最初に降り立った惑星でカイロスと名乗る少年と出会ったことから道がひらけていく。
絵のタッチからは判断できないほどシリアスなSFであるがその一方で絵柄の雰囲気を損なわないユーモアとほのぼのとした部分もある。
時として垣間見せるグロテスクさは、それがSFであるという点も踏まえて、木城ゆきとの『銃夢』に近い雰囲気なのだが、絵柄は対極的だ。
様々な惑星を渡り歩いて戦い続けるという展開からいくらでも話を続けていくことができるのだが、3巻で完結となった。
主人公を咎人として「剣闘刑」に追いやった人物との対決やスターゲイザーの謎、とそれまでのもやもやとした部分にしっかりとした解明と十分なエピソードを描ききって最後はハッピーエンドと、楽しませてもらった。
『彼方のアトラス』にはなかった悪人の毒々しさとグロテスクさというのがこちらには存在していて、完成度の高さとしては『彼方のアトラス』だけれども好みとしては『わたしのカイロス』のほうが好みかな。

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