宇宙大怪獣ギララ

白山宣之の新刊が出た。
もともと寡作なうえに単行本化も熱心でなかったと聞く。
そのせいか、メジャーな場所で話題に上ることもなく、マイナーな作家として終わってしまったけれども、それはその作品の良し悪しとは異なる。
売れなければダメだという意見もあるだろうけれども、それでも、売れなかった作品は悪い作品なのかといえばそうではない。
というわけで、今回もさまざまな傾向の作品が収録されている。やはり『童夢』を描く以前の大友克洋の作品が醸し出す雰囲気と同じものを感じさせてくれる。
いや、あの当時の大友克洋の世界をさらに突き進んでいったその先の世界といったほうがいいかもしれない。
それは絵だけではなく、そこで語られる言葉にも現れている。
「INNOCENT」の中のワンシーン「夜が歩いているのさ」なんてセリフなどは、そこに描かれている世界と合い重なって、よくもまあこんな言葉を紡ぎだすことができるものだと、恐れ入るばかりだ。
その一方で、「サザンクロスの秘宝」のようなギャグ漫画もあるし、「GOLDEN SLUMBERS」のようなSF作品もある。
なかでも怪獣漫画でありながらまったく怪獣が出ないまま、小津安二郎のような世界でもって怪獣出現による大混乱の状況を描いた「宇宙大怪獣ギララ」が素晴らしい。
もちろん、松竹映画が1967年に公開した『宇宙大怪獣ギララ』とは全く別物である。

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