- 著: 豊田 有恒
- 販売元/出版社: 角川書店
- 発売日: 1978/05
豊田有恒はわりと多彩なジャンルの小説を書いた人なので集中的に読んだことが無い。
どれか一作を選べといわれたら『モンゴルの残光』だろうけれども、モンゴルという国に興味が無かったために読まずにきてしまって、それが集中的に読まなかった原因のひとつだ。
もうひとつは、和製ポール・アンダースンと呼ばれていたせいだ。実を言うとポール・アンダースンはあまり読まなかった。
というのもポール・アンダースンには器用貧乏的なイメージがあって、なんでもそつなくこなすけれども、傑作は書けない。というイメージがある。豊田有恒にもそんなイメージを抱き続けていた。
デビュー作である「火星で最後の……」は昔から読みたいと思っていたのだけれども、収録してある本が見つからず、読めないままだった。
デビュー作を読むことが出来なかったというのも豊田有恒の小説をあまり読まなかった理由のひとつだったが、収録されている本が見つからないというのも、手軽に読むことの出来る文庫に収録されるにあたって、改題されていたからだ。
「絶滅者」という題名になっているとは思いも寄らないし、その短編が収録されている本の題名が『改体者』という題だから気がつくほうがどうかしている。
「改体者」とはサイボーグのことなのだが、調べてみるとこの当時、サイボーグのことを「改体者」と書いている小説がわりとある。平井和正の『サイボーグ・ブルース』では「改体者」と書いている部分があるし、ロバート・シルヴァーバーグの「Where the Changelings Ones Go」は「改体者の行く道」という題名で翻訳されている。
しかし結局、この言葉は定着しなかったようだ。
話の方はというと、アイデアは面白いけれどもその処理の仕方はやはり古びてしまっていて、もっと早く読んでおけば楽しめただろうけれども、今となっては、回顧的な読み方しか出来ないなという印象で、埋もれた名作とまではいかなかった。
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