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- 『イエローマン 杉浦茂シュールへんてこりん傑作選』杉浦茂
なんでここで杉浦茂なんだとは言わないで欲しい。
たしかに今となってはキャラクターの絵がらとか言葉遣いとか古臭さというか幼稚性を感じるかもしれない。
でも、得体のしれない生き物や乗り物といった部分のデザインに目を向けてみるとどうだろう。単純な線なのでうまいとは感じないだろうけれども、なんでこんなデザインをすることができるのだろうかと思うはずだ。そう思いながら、幼稚性を感じる言葉遣いに目を向けてみると、どうしたらこんな言葉遣いをすることができるのだろうかと疑問に思うはずだ。
杉浦茂の世界というのはつまり、突き詰めていくと、どうしたらこんな発想ができるのだろうかという世界なのだ。もちろん、こんな発想ができたからといって実生活で役に立つことなど全くない。でも、役に立つのが漫画というわけではない。へんてこりんで、バカバカしくって、そして不思議な漫画だ。
この本には杉浦茂が88歳の時に描いた遺作も収録されている。さすがに線は弱々しく、ペン入れしていない線は途中で途切れていたり、全盛期の絵とは比べようもなくなっているが、タイトルに「2901年宇宙の旅」と名付け、そして弱々しい線しか描けないようになっても、まだ描こうとしたのは執念なのかそれとも描くことそのものが杉浦茂にとって生きるということだったのだろうかと思わせる。
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