仕事場の隣に川が流れている。そしてその川に沿って自動車が一台なんとか通ることのできる程度の幅の細い道がある。いわゆる川べりの道だ。
駐車場からオフィスまで、僕はこの道を通って行くのだが、仕事の帰り道、夕方から夜にかけて、この道を後ろ向きで歩いてくる人たちを時折見かける。
1人だけではなく数人、といっても一度に見かけるのは1人だけで集団で後ろ向きに歩いてくる人たちを見かけることはないのだが、調べてみるとどうやら後ろ向きに歩くという健康法があるらしい。
後ろ向きに歩いてくる人たちの格好を見ても、ちょっとのどが乾いたのですぐ近くの自動販売機まで買い物に、というような格好ではなく、健康のために歩いていますというような格好をしているのでおそらくそうなのだろう。
歩くだけでも健康によいのだからさらに後ろ向き健康法を追加したとなると、ますますもって体に良い感じがする。
ここで、僕も真似して毎日の行き帰りを後ろ向き出歩いたら健康になるのではないかという方向に思考が向かっていかないのは、僕が健康志向ではないからだ。
それはともかくとして、後ろ向きに歩いてくる人たちは決まって、僕から見て右側を歩いてくる。通常、人は右側通行である。従って僕も、いくら細い道だといっても右側を通るようにしている。
双方が、道の右側を歩いているのだ。
相手からすれば右側通行をしているつもりなのかもしれない。なにしろ後ろ向きとはいえども、彼らの視線では道の右側を歩いているのだ。
しかし相手は後ろ向きに歩いてくるので僕が近づいてくることなど気がつかない。もっとも、野生の勘のようなものを働かして、ぶつかりそうになる直前に避けてくれるのかもしれないが、そんな不確かな相手の行為に期待するよりも、自分の方が先に避けたほうが良い。
ということで毎回、釈然としない気持ちを抱えたまま左側へと歩を進め、ぶつかることを避ける。
後ろ向き健康法を提唱している人は、できたらでいいのだけれども、道のどちらを歩くべきかという点も考慮してほしいと思うのである。
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