『原作屋稼業 お前はもう死んでいる?』武論尊

  • 著: 武論尊
  • 販売元/出版社: 講談社
  • 発売日: 2013/3/22

Amazon

『ドーベルマン刑事』や『北斗の拳』の原作者である武論尊の半自伝的小説。
という触れ込みだったはずだけれども、実際に読んでみるとまるっきり違った。というかよくよく見れば、半自伝的小説ではなく自伝風実録ノベルだった。
長い前書きの部分で、『北斗の拳』にまつわるエピソードが語られるけれども、それ以降の物語ではそんなものは描かれない。それどころか、まず、主人公は武論尊自身ではない。そして武論尊を彷彿させるような人物が主人公だというわけでもない。そもそも、武論尊本人は武論尊本人としてしっかりと登場するのだ。
主人公は、自分が務めていた会社が社長の鶴の一声で、公用語が英語になりその結果、まっ先に自分がリストラの対象と化してしまうことを予期した会社員。
たまたま飲み屋で武論尊と出会い、一方的に弟子入りをしてしまう。
もちろん、彼はそれまで漫画の原作など書いたこともなく、四苦八苦することとなるのだが、はたしてこれが自伝的小説といえるのかという疑問符は読んでいるあいだ中、頭の上に浮かび続けている。まあ、半自伝的小説ではなく自伝風実録ノベルなのだが。
しかし、ここまで徹底的に自伝的な要素が排除されていると、といっても武論尊自身が登場する場面ではそれなりに過去が語られるのだが、排除されているように見せかけてじつはものすごく高度なテクニックでもって武論尊自身についてのさまざまな事柄が語られていて、それを読み取れないでいる自分の読解力に、おもわず自信を失ってしまいそうになる。
しかし、あくまで自伝風なのだ。

コメント

タイトルとURLをコピーしました