週刊 5巻以内で完結する傑作漫画99冊+α 34/99

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  1. 『のぼるくんたち(1)』いがらしみきお
  2. 『のぼるくんたち(2)』いがらしみきお
    こちらはギャグ漫画家としてのいがらしみきおが前面に出た作品。
    休筆前よりはマイルドになっているけれども、老人ホームを舞台にブラックで下品で、それでいて少しのペーソスがある。主人公のぼるくんは認知症の老人。彼は朝、目が覚めたときにはほとんど全ての記憶を失っており0歳児と同じ行動しか取ることができない。時間が経つににつれて徐々に記憶を取り戻し、少年期、青年期、そして壮年時代の記憶と知識を取り戻していく、しかし一日の終わりまでの間に彼がすべての記憶を取り戻すことは無い。彼が現在の年齢まで到達するのには一日の時間が足りなさすぎるのである。しかし、記憶を取り戻す速度が早まれば一日の間に現在の年齢まで到達することができるかもしれない。一日の間に誕生から成長、そして老いという人の一生を体験し、そしてそれを何度も何度も繰り返す。
    のぼるくんの基本設定だけ抜き出してみると、この話のどこがギャグなのか、と思うかもしれない。しかし、これはギャグ漫画なのだ。
    いがらしみきおはこの作品の前に、『3歳児くん』全2巻という3歳の子供を主役にしたほのぼの漫画を描いた。そしてその後に描いた作品が老人たちを主人公としたこの本。かたや純粋な幼児であり、片方は酸いも甘いも体験しきった幼児のような老人たち。どんなにキレイ事をならべても老人には悲しさがあり、今の日本の高齢化社会を予言したかのような作品である、というのはちょっと言い過ぎか。しかし、最終話、のぼるくんは本来の年齢にまで到達する。ほんの僅かな時間の間に自分のすべての人生を振り返り、それは死ぬ間際に体験すると云われている走馬灯のような人生の振り返りとして描かれるのだが、この物語ではその走馬灯のような人生の振り返りを新たな希望へと結びつけている。

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