<ガリレオ>シリーズの長編三作目。
このシリーズの長編は評価が高いのでどうしても期待値が上がってしまうのだが、そもそも前の二作がたまたま良かったというだけというふうに考えたほうがやはりいいのだろう。
では、今回は駄目だったのかというとそんなことはない。ただ、前二作とは少し方向性が変わったというだけだ。
短篇集の方は、テレビドラマ化された影響か、ドラマの方の人物があらたに登場したり、主人公である湯川学の人物像もなんとなく福山雅治っぽい雰囲気がでてきたのだが、今回もそんな感じでというか、理の人であった湯川学の情の部分に焦点が当たるようになってきた。そんなわけで子供嫌いの湯川が、今回事件にまきこまれる小学生あいてに夏休み宿題の面倒をみてあげたり、この少年が船酔いをしてしまうために、綺麗だとうわさされている沖合の海底の景色を見せてあげるためにいろいろと苦心したりと、事件の謎解きよりもこちらのほうが微笑ましく、読んでいて楽しい。
そんなわけで、肝心の事件の方はというと珍しく警察側が敗北する展開となり、ミステリとしての面白さよりも湯川が少年に対して見せる情の部分においての変化のところが見どころとなっている。
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