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- 『蝶のみちゆき』高浜寛
一ノ関圭の『鼻紙写楽』に引き続き、江戸時代の話をもう一冊。高浜寛は日本よりも海外で高く評価されている人である。
こちらは長崎を舞台とし、その町にある遊廓で遊女として生きる一人の女性を中心とした物語だ。
遊廓であるが故に夜の場面や、室内の場面が多いのだが、光の使い方がうまい。いや使い方というよりも、蝋燭の灯に照らされる人の姿が美しいのである。もちろん主人公である遊女がその町で一番の美人であるという設定なので、美しく描いているという部分もあるけれども、それを抜きにしても当時の光はこんな光だったのだろうと感じさせるような描き方だ。
そんな美しい光のなかで描かれる物語は、遊女に身を落としてまでも愛する人を救おうとする一人の女性の、悲しく切ない物語。それはまさしくこの本のタイトルにある、儚い蝶のようでもある。
彼女の物語の結末は決してハッピーエンドではない。しかし、彼女の思いの大きさと重さを知った後では、決してハッピーエンドではないこの結末であっても、それもまた良いのではないかと思わせられる。
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