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- 『トランスルーセント 彼女は半透明(1)』岡本一広
- 『トランスルーセント 彼女は半透明(2)』岡本一広
- 『トランスルーセント 彼女は半透明(3)』岡本一広
- 『トランスルーセント 彼女は半透明(4)』岡本一広
- 『トランスルーセント 彼女は半透明(5)』岡本一広
5巻以内で完結する漫画というくくりで始まったこの一連の記事だが、その中でこの制約の巻数を目一杯使った唯一の漫画がこの漫画。かといってこの漫画を紹介したかったから5巻という制約を設けたというわけではないが、できるだけ多くの漫画を紹介したいと思うなか、5巻まで使っている漫画はできるだけ省いていったわけだが、どうしてもこの漫画だけは外すことができなかった。
体が徐々に透明になってしまう原因不明の奇病「透明病」に罹ってしまった少女の物語。透明病に罹ってしまったのは主人公の少女だけではないので物語が進むにつれて同じ病気で苦しむ人達も何人か登場するのだが、この透明病、一気に体が透明になってしまうのではなく、透明になってしまう時間が少しずつ増えていき、最終的に完全に透明になっていってしまうという設定である。何時自分の体が完全に透明になってしまうのかという不安と、思春期の少女達が持つ普遍的な不安の感情とが共存して奇跡的ともいえるバランスでもって良質の青春物語として成立している。
惜しむらくはデッサンがあまりうまくなく、絵としてのバランスがとれていないコマが多いので、そのあたりで絵柄として受け付けない人も多いかもしれないが、実際に読んでみると、その下手さの部分も物語のうまい味付けの一つ、つまり思春期の少年少女のあやうさという部分をうまく表現しているんじゃないかという気にもなってくる。
単純にうまい絵だけが傑作となるわけではない。
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