菜時記　葉月/乙酉

統合失調症を発症していらい、人の大勢いる場所を恐れるようになった妻は、買い物に行くことも困難になった。
だから僕は妻の代わりに一週間分の食料品や日常品を買うために週末、一人で買い物に出かける。
普通の夫婦であれば当たり前のようにできることでも僕達夫婦にはとてもむずかしくなってしまったことは数多い。しかし不思議とそのことで不幸だとは思うことは少ない。
ただ、当たり前のことでもできないということを理解してもらえない時があり、そういう時は少しだけ悲しくなる。
菜時記　葉月/乙酉
茄子が1本38円で僕を待ち構えていたのだが、おいそれとそう簡単に飛びつく僕ではない。
その先の奥にある地元野菜のコーナーをチェックしてみないことには単純にお買い得品とはいえないのだ。
レタスは158円、サニーレタスとグリーンカールは178円だったので、今週はレタスを買うことにする。レタスそのものもわりと大きめなので、悩むこともない。レタスに比べるとキャベツは安定した値段の1/2カットで88円、ありがたい値段だ。
かぼちゃが高めだったので、この店では買わずに他で買うことにする。最後に寄る予定の店ならばここより安い可能性が高いし、そこでも高かったら諦めればいい。
ピーマンは128円と安くなってきているが生憎と今週は買う予定がないので素通りして、地元野菜のコーナーで早速茄子を物色する。Bというシールが貼られていた茄子が5本で100円だったので、一応切り口と外観をチェックしてそして問題なさそうだったのでかごに入れる。胡瓜は先週よりも少し高くなっていて、そろそろ胡瓜のシーズンも終りに近いことを感じさせる。地元野菜の店ではいくらで売られているのだろうか。ニラが80円だったのでモヤシと一緒にかごに入れる。
カマスの干物があったのでこれも買うことにするのだが、家に帰って妻にカマスはあまり好きではないと言われて少しがっかりする。
ミニトマトが無くなり、長ネギも無くなったので足が遠のきがちの地元野菜の店だが、胡瓜を買うために立ち寄る。胡瓜は3本で110円。かぼちゃがあったので値段を見てみると手頃な大きさのものが100円という値段だったのでこれも買う。
続いて最後の店へ。
ミニトマトが少し量が多いものの、手頃な値段だったので買うことにし、西瓜を物色しに行くのだが、先週まで税抜き298円で売られていたのに今週は380円。運が悪かったと諦めてかごに入れ、あさりが税抜き199円と先週よりも値下がりしていたので少し気分が良くなる。豚のレバーが手頃な値段だったので、狙ったわけではないけれどもこれでレバニラ炒めの材料が揃った。日曜日の夕飯はレバニラ炒めで決定だ。