表紙の絵はくまおり純。
どうやら僕はくまおり純が表紙絵を手がけた本と相性がいいらしい。
森見登美彦『ペンギン・ハイウェイ』、荒川工『ワールズエンドガールフレンド』、遠藤寛子『きりしたん算用記』、石野晶『生者の行進』、いずれも僕の琴線に触れた作品だ。
ガガガ文庫というのは後発のレーベルだけあって時折、ライトノベルという枠組みから少しはずれる作品を出すことがある。名作として名高い過去の作品を跳訳という形で蘇らせたシリーズがあった。
今のところ六作まででていて、それ以降は出る気配もないのだが、必ずしも成功しているとはいえないまでも面白い試みだった。
で、この作品はくまおり純の表紙ということからおおよそ想像できる雰囲気を持つ物語なのだが、不思議な現象がおこる幻想小説でもなく、あくまでリアルな現代の高校生を描いたミステリだ。
タイトルは『鳥葬』そして『まだ人間じゃない』という副題が付いている。副題の意味に関しては早い段階で明らかにされる。ようするに、子供時代というのはまだ人間として扱われていないし、人間としての意識も持っていないという意味だ。そして成長し大人になることで初めて人間として自分自身を理解する。
一方で『鳥葬』に関してはその意味が理解できるようになるのにはもう少し時間がかかる。
では、現代日本を舞台として幻想風味もない物語のどこに鳥葬が登場するのか。その部分にこの物語の面白さがあり、作者がこの物語の中でその場所として見出した空間において、死者は自らを啄まれ、文字通り鳥葬される。それもその空間が存続する限り永遠に続くのだ。
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