『しろいろの街の、その骨の体温の』村田沙耶香

  • 著: 村田沙耶香
  • 販売元/出版社: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2012/9/20

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川島誠が思春期の男の子を描いてるのに対して、村田沙耶香は思春期の女の子を描いている。
と単純に比較してしまうのは間違いなのだが、描く人によってこうも異なるものなのかそれとも男と女はここまで違う生き物であるのか、それとも学校という同じ場所に通いながらもこうも違う世界を見て感じて、生きているのだろうかと思い込まされてしまう。
まず、一見するとなんだかよくわからない『しろいろの街の、その骨の体温の』というタイトルが秀逸で、このタイトルが何を意味しているのかは読み進めていくうちに次第に理解できるようになるのだが、理解できるようになると、このタイトルの付け方のうまさに驚かされるのだ。
思春期の少女が持つさまざまな感情や気持ちや行動をとにかく詰め込んでそしてかき回せたような話で、おそろしく密度が濃い。
さらには教室内カースト制度まで描き、さらには主人公の少女が美人でも普通でもない、クラスの中での底辺に位置する少女であるという点が物語の中で詰め込まれた主人公の様々な感情を増大させ、そしてそれゆえに読んでいて息苦しく、けっして楽しくはない物語に仕上げている。
しかし、そんなふうに主人公を描きながらも作者は主人公を見捨てたりはしておらず、主人公なりに成長することによって主人公とは対極的な位置にいる男の子との恋という結末は少しだけ希望が与えられる。

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